水出しは何が違うのか
水出しコーヒーは、お湯を使わず、粗く挽いた豆を水や常温の水に長時間漬けて抽出したコーヒーです。水は成分をとてもゆっくりとしか引き出さないため、数分で終わるハンドドリップと違い、半日以上かかります。その代わり、お湯でよく出る鋭い酸味や苦みの成分が出にくく、まろやかで角の取れた味になりやすいのが特徴です。冷めても味があまり変わらないのでアイスで飲むのに向いており、原液をまとめて作っておけば数日かけて楽しめるのも利点です。氷の上から水を一滴ずつ落として抽出する方式は水出し専用の器具を使うもので、豆を水に漬けておく方式とは道具も味も少し違います。この記事では、家庭で最も手軽な漬け置き式を扱います。
道具と豆
特別な器具がなくても作れます。ふた付きのガラス瓶やピッチャー、こし網、紙フィルター、キッチンスケールがあれば十分です。豆は中煎りから深煎りの間ならチョコレートやナッツのような香ばしい味に無難に仕上がり、浅煎りなら果物のような酸味がほのかに残る爽やかな味になります。どちらにしても長く漬ける間に香りが弱まりやすいので、焙煎から日がたちすぎていない豆を使うのがおすすめです。
- ふた付きのガラス瓶やピッチャー:においが移りにくい素材
- こし網と紙フィルター:一度目で大きな粉、二度目で細かい粉をこす
- キッチンスケール:豆と水を重さで量る
- 粗挽きの豆:ミルがなければ購入店で粗く挽いてもらう
比率と挽き目
家庭では、水で薄めて飲む濃い原液を作る方法が手軽です。豆1に対して水8〜10程度の重さの比率がよくある出発点で、豆100グラムなら水800グラムから1キログラム前後になります。最初からそのまま飲める濃さで作りたければ水をもっと増やせばよいのですが、原液にしておけば飲むたびに濃さを選べるので失敗が少なくなります。挽き目は粗塩や粗いパン粉くらいの粗挽きにします。細かく挽きすぎると濁って苦みが強くなり、細かい粉がフィルターを詰まらせて、こすのに時間がかかります。
作る手順
工程は混ぜる、待つ、こすの三段階だけです。時間を決めて同じやり方で何度か作ってみると、好みの組み合わせがすぐに見つかります。
- きれいに洗って乾かした瓶に、粗挽きの豆を入れる
- 冷たい浄水を注ぎ、乾いた粉が残らないようスプーンでまんべんなく混ぜる
- ふたを閉め、冷蔵庫で12〜24時間前後漬ける
- こし網で大きな粉をこしてから、紙フィルターでもう一度こす
- こした原液は清潔な瓶に移してふたを閉め、すぐに冷蔵する
漬ける時間と温度
時間が短いと味が薄く酸っぱさが目立ち、長すぎると木のような味や渋みが出てきます。冷蔵庫なら12時間ほどで軽く爽やかに、18〜24時間で濃く重めに仕上がる傾向があります。まずは16時間前後で作って味を見て、次回に延ばしたり縮めたりしてみてください。常温で漬けると早く抽出できますが、水とコーヒー粉を長時間常温に置くのは衛生面で不利なので、家庭では最初から冷蔵庫で漬けるほうが安全です。暑い時期はなおさらです。
薄め方と飲み方
原液はそのまま飲むにはかなり濃いので、水や牛乳で薄めます。原液と水を1対1から1対2の間で混ぜるのがよくある出発点で、氷が溶けてさらに薄まることも計算に入れておきます。牛乳で割れば、香ばしくまろやかな水出しのカフェラテになります。温かく飲みたいときは原液にお湯を注げばよく、それでも最初から熱湯で淹れたコーヒーよりやさしい味になります。濃く飲みたい日も薄く飲みたい日も原液ひとつで合わせられるのが、原液方式のいちばんの利点です。
よくある失敗
最も多い失敗は豆を細かく挽きすぎることです。味が濁るだけでなくフィルターが詰まってこすのに時間がかかり、その間ずっと原液が空気に触れます。漬け終わったあと粉を取り出さずに瓶ごと何日も置いておくのも避けましょう。時間がたつほど苦みや雑味が出続けるからです。豆をぎゅうぎゅうに詰めて水が均一に行き渡らないこと、においの移ったプラスチック容器を使うこと、ふたをゆるく閉めて冷蔵庫のほかの食品のにおいが入ることも味を損ねます。原液をそのまま飲んで苦すぎるとがっかりする人も多いのですが、薄めることを前提に作ったものだと覚えておいてください。
保存とカフェインの注意
こした原液は密閉容器に入れて冷蔵し、味のよい数日のうちに飲み切るのがよいでしょう。時間がたつと香りが抜けて酸っぱい味や平板な味に変わり、においがおかしいときや表面に何か浮いているときは、もったいなくても捨ててください。瓶や道具は使うたびにきれいに洗い、完全に乾かしておきます。水出しは味がやさしいのでカフェインが少ないと思われがちですが、原液は豆をたくさん使うため、薄め方によっては普通のコーヒーよりカフェインが多くなることもあります。カフェインに敏感な人、妊娠中の人、治療中の病気がある人は、飲む量を医師や薬剤師に相談し、夜は薄めにするか、カフェインレスの豆で作ってみてください。
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